アセンデッドマスター「パオロ・ヴェロネーゼ」
パオロ・ヴェロネーゼ（Paolo Veronese）は、Paul the Venetian / ヴェネツィア派パオロと呼ばれた、イタリアのルネサンス期の芸術家、パオロ・カリアーリ（Paolo Cagliari）のことです。出身地のヴェローナから「ヴェロネーゼ」として知られるようになり、パオロ・カリアーリから、パオロ・ヴェロネーゼに名前を変えました。
「Self-Portrait 自画像」（1558年-1563年）
パオロ・ヴェロネーゼ
Paul the Venetian（ポール・ザ・ヴェニーシャン）は、ヴェネツア人ポール、ベニスの人パウロと訳されたりもしますが、芸術家であった彼を考えると、ヴェネツィア派ではないかと思われます。
パオロは、1528年に生まれ、16世紀の黄金期にヴェネツィアに移り、宗教的な壁画や絵画を描きました。ルネサンス後期のヴェネツィアを代表する画家であると評価されています。「カナの婚礼」、「レヴィ家の饗宴」などの作品が有名です。
優れた色彩感覚を持ち、幻想的な色使いで、精緻かつ物語性の豊かな絵画が多く、ヴェネツィアとヴェローナの修道院の食堂をモデルとした、聖書に書かれた饗宴のエピソードを題材とした「レヴィ家の饗宴」はパオロの重要な絵画です。
パオロは、1573年にヴェネツィアにあるサンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ聖堂の食堂の壁画「レヴィ家の饗宴」を描きました。このページのタイトル画像が、サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ聖堂です。この食堂に飾られていたティツィアーノ・ヴェチェッリオの油彩画が、火災で焼失してしまったため、依頼を受けたのです。
「レヴィ家の饗宴」は、もともと「最後の晩餐」として描き始めたものでした。ヴェネツィア風の祝宴を表現した、縦5m超、横12m超という非常に大きな絵画になり、パオロの食事の光景を描いた作品群の中でも最高傑作とされている作品です。
十二使徒が集う「最後の晩餐」の情景だけでなく、ドイツ軍人、小人の道化、様々な動物など、パオロが作品に物語性を持たせるため、異国風のモチーフがともに描かれました。パオロの特徴である輝くような色使いに、豊かな物語性、感情表現、非常に繊細かつ深い意味合いを持たせて描かれている人物間の身振りなどに、優れた描写が見られる作品だと評価されています。
「The Feast in the House of Levi レヴィ家の饗宴」（1573年）
パオロ・ヴェロネーゼ
アカデミア美術館（ヴェネツィア）
パオロの10年前の作品「カナの婚礼」の時は、依頼主のベネディクト会修道僧が、作品に可能な限りの人物を描くことを望みました。しかし「レヴィ家の饗宴」では聖書の「最後の晩餐」のエピソードを、贅沢な衣装を着たヴェネツィアの貴族階級の祝宴のように描き、本来の聖書のエピソードとは無関係な道化、酔っぱらったドイツ人、小人などの下品なモチーフを用いたことが、不信心ではないかとしてローマ・カトリック教会で問題視され、パオロは異端審問会に召還を受けることになったのです。
神への冒涜として激しい尋問を受けましたが、この審問は、懲罰ではなく警告が主であり、パオロに3カ月以内に作品を描き直すように命じました。しかしパオロは「我々画家は、詩人あるいは狂人と同じく、心に思ったことを自由に表現する権利を持っている」と主張し、作品を描き直すのではなく、単に作品の題名を「最後の晩餐」から「レヴィ家の饗宴」に変更することで、この異端審問会を乗り切ったといわれています。
パオロの作品は、パリ、ヴェルサイユ、フィレンツェ、マドリード、ニューヨーク、ロンドンの美術館や宮殿にあります。パリのルーブル美術館には、パオロの作品がたくさん飾られていますが、パオロの最も有名な作品「カナの婚礼」もあります。
「The Wedding at Cana カナの婚礼」（1562年 – 1563年）
パオロ・ヴェロネーゼ
ルーヴル美術館（パリ）
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